常設展示/3階

3階フロアマップ

ギャラリー

3階案内 【資源編】

はじめに

 3階は、「資源開発」についての展示です。
 資源の開発技術は、多岐にわたっていますので、当館では、資源開発の流れを「探鉱」→「採鉱・採油」→「選鉱」→「製錬」の4つの工程に分類し、鉱物の探査から金属の製造まで、それぞれを独立したコーナーとして展示しています。この他にも、「鉱物資源の分布」「鉱山の保安技術」「自然エネルギー」「秋田の鉱山史」など、3階には全部で9つのコーナーを設け、鉱山技術の全容とその変遷が学べるようになっています。
 鉱業博物館では,鉱山設備の模型を多数展示しており,館の特色のひとつになっています。通常、鉱山設備は巨大で地下にあるものも多く、その全貌を把握することは難しいことです。そこで、それらを模型にして展示することで、地下の状態や機械の内部構造など、通常見えないものや把握しにくいものも理解し易くなります。鉱山模型コレクションの中には、近代化過渡期の技術を伝える歴史的価値を備えたものも多数あります。これらすべてが特別につくられた唯一無二の作品であり、精緻な模型を眺めるだけでも楽しむことができるでしょう。

鉱石の価値と鉱物資源の分布コーナー

 鉱物資源は、世界のどこで多く産出するのか? 日本ではどこで何が産出されたのか? 鉱業が盛んだった秋田にどんな鉱山が存在していたのか? ここでは、巨大な地球儀や立体の地質図を用いて、世界、日本国内、および秋田の鉱物資源の分布について学ぶことができます。
 また、元素の周期表にしたがって、資源として用いられている金属・非金属元素を展示し、その元となった鉱物について説明しています。この展示から、「化学」の発展によって、抽出される元素の種類は広がっていき、利用できる鉱物資源の種類も増えてきたことがわかります。

 写真1 周期表に並べられた元素標本(金属および非金属標本)

資源の探査(探鉱)コーナー

 資源の探査では、資源が存在する場所(鉱床)探しを、地球規模のスケールから始め、数百メートル四方の範囲まで特定しなければなりません。調査と推理によって、鉱床の範囲をどんどん絞っていく宝探しの過程が「探鉱」です。
 ここでは、人工衛星を使っての広域の資源探査法(リモートセンシング)や、地下構造を地表から電気や人工地震、重力などによって推定する物理探査法、そして実際に地下の岩石を掘り出すボーリングマシーン等について展示し、解説しています。さらに、秋田県北部の黒鉱鉱床の発見につながった貴重な「岩石コア」も見ることができます。どのようにして、有用な鉱床の発見にまで至るのか? その醍醐味の一端に触れられる展示内容になっています。

 写真2 地下構造を解析するための大型重力偏差計(昭和初期)

石油・天然ガスの開発(採油)コーナー

 日本には、「上総掘り(かずさぼり)」と呼ばれる優秀な井戸掘り技術がありました。現在のロータリー式(回転式)掘削機が普及する大正期まで、日本では上総掘りで石油の掘削が行われていました。当館には、現在のロータリー式掘削機の模型と共に、大正期に使用されていたロータリー式と上総掘り(綱式)との共用が可能な掘削機の模型を展示しています。日本の掘削技術の転換がよくわかる極めて貴重な模型です。
 この他にも、秋田やアラブの原油やそれから採れる石油精製品なども展示し、原油の品質や精油の仕組みなどを解説しています。また、石油掘削に実際に用いられていた掘削用ビットも展示しており、硬い合金のビットが摩耗したり、損傷している様子が見られます。

 写真3 ロータリー式掘削法と上総掘り(綱式、衝撃式)法を組合わせた石油掘削機

鉱石および石炭の開発(採鉱)コーナー

 地下鉱山では、大量の鉱石を採掘するために、広範囲にたくさんの坑道(トンネル)が掘られています。秋田県北部の尾去沢鉱山では、坑道の総延長距離が800kmに達したといわれており、地下鉱山の構造は、想像を絶する複雑さになっています。残念ながら、地下鉱山の全体構造は、通常、2次元の平面図でしか見ることができません。ところが、18世紀頃には、これら鉱山の構造や設備を模型にして、3次元的に見ることができるようにした学生用の教材が、ドイツのフライベルク鉱山学校の工房で製作されました。ここで作られた模型を通称「フライベルク模型」といい、世界各地の鉱山学校に輸出されていました。
 当館でも、秋田鉱山専門学校の開校当時(100年前)に購入したと思われる、8点のフライベルク模型を所蔵しており、この木と鉄で作られた精緻な模型から、当時の鉱山技術の全容を想像することができます。

 写真4 地下鉱山の一断面を表した模型(フライベルク模型)

鉱石から有用鉱物の分離・選別(選鉱)コーナー

 岩石に有用鉱物が含まれたものを「鉱石」と呼びます。銅の鉱石の場合、銅の含有量は3%程度です。この鉱石の中から有用鉱物だけを選別し、銅の含有量を30%程度に高めた「精鉱」にする工程を選鉱といいます。
 選鉱工程の最も重要なポイントは、鉱石を微細に破砕・粉砕することです。鉱石を粉にすると、粉1粒1粒は、有用鉱物とその他の鉱物に分かれます(単体分離)。昔は、鉄のハンマーで砕き、石臼で粉にしていた工程を、現在ではクラッシャー(破砕機)やミル(粉砕機)といった機械で行っています。当館では、クラッシャーやミルの動く模型を展示し、破砕や粉砕の機構を詳しく説明しています。
 単体分離された鉱石の中から、比重や磁性など鉱物の性質の違いを利用して、有用鉱物だけ取り出します。とくに、水との親和性の違いを利用して金属鉱物だけ泡で浮かせて回収する方法を「浮選(ふせん)法」といいます。ここでは、小型実験装置でこの浮選法を体験することができます。

 写真5 岩石を破砕するコーンクラッシャーの模型

鉱物から金属元素の抽出(製錬)コーナー

 酸化鉱物や硫化鉱物を還元して金属元素を取出す工程を製錬といいます。還元の基本は鉱物を溶鉱炉で加熱することです(乾式精錬)。銅の乾式精錬工程を、小坂精錬所の模型で見ることができます。乾式製錬法で取出した金属の塊の中には、まだ不純物やほかの金属が含まれています。例えば乾式法で得られる粗銅の中には、銀が多く含まれることがあります。古来法では、粗銅の中に鉛を混ぜることで、銅から鉛といっしょに銀を分離し(南蛮吹き)、そののち鉛から銀を抽出していました(灰吹き)。近代法では、粗銅を酸の溶液中で溶かし、電気分解によって純度の高い銅と他の金属を分ける電解精錬が行われています。
 このコーナーには、大平洋金属のフェロニッケル製造プラントの模型や製鉄用のコークス製造炉等の模型もあり、鉄や銅の製錬設備を詳しく学ぶことができる展示になっています。

 写真6 銅の製錬プラント模型(小坂製錬所モデル)

鉱山の安全と環境対策コーナー

 鉱山開発の歴史は、落盤や火災等の坑内事故と、廃水やばい煙等による公害問題との戦いの歴史でもありました。とくに炭鉱では、炭層から出るメタンガスによるガス爆発事故が絶えませんでした。地下坑内は暗闇ですので、作業にはランプを用いる必要がありますが、炭鉱での火気の使用は大変危険でした。そこで、1815年、イギリスのデービー卿により発明された安全灯は、ランプ中の炎が坑内空気中のメタンガスに着火しない機構になっており、この発明によって、ガス爆発事故が画期的に減少していきました。
 当館には、坑内灯(ランプ)のコレクションが数多くあり、中世のローソク立てやオイルランプから、安全灯、カーバイドと水を燃料とするアセチレンランプ、そしてエジソンの電球の発明間もない頃の、電池式の電球ランプに至るまで、坑内ランプ技術の変遷を見ることができます。
 その他にも、携帯用の坑内風速計や有毒ガス検知器、一酸化炭素マスク等、坑内で安全に働くための必需品について学ぶことができます。

 写真7 炭鉱で用いられた安全灯のコレクション

自然エネルギーの利用コーナー

 鉱山開発では、鉱山のエネルギーを確保するため、同時に水力発電所を建設することがあります。秋田県北部の鹿角市には、鉱山会社が鉱山用の電力に建設した水力発電所が数多く残っており、鉱山が閉山した現在でも地域の重要な電源となっています。鉱山は、ローカルな自然エネルギーの利用を、先進的に進めてきた産業でもありました。
 現在では、自然エネルギー利用システムとして、地下深部の「地熱」を利用する地熱発電や、浅部の「地中熱」を利用したヒートポンプによるエアコンシステム等も開発が進められています。当館3階の一部の部屋では、博物館の周りの地中熱を利用したエアコンシステムを試験的に導入しました。この部屋では、地中熱利用のエアコンシステムの仕組みを学習しながら、その効果を体感することができます。

 写真8 博物館の敷地中の地中熱を利用したエアコンルーム

秋田の鉱山史コーナー

 秋田県には、古くから、院内銀山、尾去沢鉱山、阿仁鉱山、荒川鉱山の4つの大きな鉱山があり、多くの銅や銀が生産されてきました。県内の鉱山は、秋田藩が管理しており、藩による坑内の絵図が残されています。鉱業博物館も、数点の絵図を所蔵しており、一部を展示しています。
 とくに、阿仁鉱山の絵巻物は、鉱石が採掘され,選鉱と製錬を経て粗銅が生産されるまでを詳しく書き記しており、当時の鉱山技術や鉱山の風俗を知る上で、大変貴重な資料といえます。残念ながら、絵巻は長いため、全編は公開できませんが、実物の一部だけお見せしています。

 写真9 阿仁鉱山における鉱石の採掘から選鉱・製錬を経て粗銅の出荷までを記した絵図(1864年)

 その他、屋外には館内に入らない「実機」が展示してあります。ゆっくりと散策しながら展示品をご覧ください。屋外

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